清澄山の弱い天狗

これは、むかしむかしの天津の話。
天狗の話はいろいろあるけれど、清澄山の天狗は、とても弱かったそうです。どのくらい弱かったかって?まあ聞いてください。
天津実入(みいり)の浜ぞいにある山に、一本松がありました。
そこには、いつも清澄山の天狗が遊びに来ていました。
ある日のことです。漁師が投網をうっていました。
「おっ、!」
手応えがあったので漁師はとても喜び、投網を引き上げました。するとどうでしょう。投網の中にかかっているのは、みんな木の葉だったのです。これはどうしたものかと不思議がっていると、松の木の上で天狗がわらっています。
「このやろう、おりてこい! おれとすもうをとるべ!」
かんかんにおこった漁師は、松の木からおりてきた天狗とすもうをとり始めました。そしてついに天狗を負かし、羽根をもぎとってしまいました。その上、鼻までへしおってしまったのです。
さんざんなめにあった天狗は、やっとのことで清澄山まで逃げ帰ったということです。弱いんだねえ。

出典『民話あまつこみなと』語り部 小野千代 記録 鈴木悦子